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高市総理の所信表明演説――連立合意からのトーンダウンPart①

kitanoyuko

令和7年10月21日、日本初の女性総理として高市早苗自民党総裁が首班指名され、高市内閣が発足しました。そして10月24日に高市総理初の所信表明演説が行われました。

自民党保守派であり政策通の高市総理に一定の期待をしていただけに、その演説内容には残念ながら失望せざるを得ません。

「政治の安定」の下で自民党・日本維新の会の連立政権が発足し、同20日に署名された連立政権合意(いわゆる「12本の矢」)には大胆な政策改革への期待を抱かせる内容が盛り込まれていました。

維新側は「この12項目が実行されなければ連立をやめる」とまで明言し、強い改革実現の決意を示していたのです。しかし肝心の所信表明演説を聞いてみると、その内容は連立合意文書で謳われた改革意欲から大きくトーンダウンし、従来の自民党政治の枠を超えないものに感じられました。

結局、「自民党の枠を超えておらず、新自由主義的なグローバリズムの流れから脱していない」という評価が下されても仕方ない出来栄えだったと言えます。

特に強く感じたのは、演説全体が依然として新自由主義的グローバリズムの流れから脱していない点です。財政運営について高市総理は「責任ある積極財政」を掲げつつも、常に財政の持続可能性(プライマリーバランス)に配慮すると強調しており、大胆な財政出動には慎重な姿勢が見て取れました。

連立合意で掲げられた積極財政方針に期待した立場からすると物足りなく、「結局は従来路線の延長ではないか」という不安を抱かせる内容でした。

実際、所信表明直前に政権が掲げた「責任ある積極財政」の看板には「財政の持続可能性に常に配慮しつつ」といった文言が付け加えられており、政府支出拡大に慎重な勢力への配慮が透けて見えました。

自民党税制調査会に代表される財政規律派の抵抗が背景にあると想定されます。立憲民主党の野田佳彦代表も「宮沢(洋一税調会長)さんをそのまま残したままだと、高市さんがやりたい積極財政論はできないのではないか」と指摘しており、実際2015年から税調会長を務め減税に慎重な宮沢氏は「103万円の壁」を守る“ラスボス”とも呼ばれてきました。

こうした財政健全化勢力の存在もあり、「積極財政」と言いつつもプライマリーバランス黒字化目標など財務省的な呪縛から逃れられていない印象です。この姿勢では、本当に思い切った政策には振り切れないでしょう。

以上のような違和感を踏まえ、以下では連立合意と所信表明演説のギャップを具体的に検証しつつ、参政党の視点から問題点を鋭く指摘していきます。

連立合意で評価できる保守改革項目

まず公平を期すために触れておきたいのは、連立合意文書には評価できる政策も含まれていることです。参政党として支持できる保守改革の項目がいくつか盛り込まれており、これらは日本再生のため前向きに捉えたい部分です。主な例を以下に挙げます。

  • 社会保険料負担の軽減

現役世代の保険料率の上昇を食い止め、将来的には引き下げていく方針が明記されています。社会保障改革により若い世代の負担増を止める方向性は評価できます。

  • 男系男子による安定的な皇位継承策

古来例外なく維持されてきた男系継承の伝統を重視し、皇族に養子縁組を可能とすることで皇統に属する男系男子を皇族とする案を最優先で進め、皇室典範改正を目指すとされています。男系による皇位継承維持に踏み込んだ点は高く評価できます。

  • 夫婦別姓ではなく旧姓使用拡大

戸籍制度と「同一戸籍・同一氏」原則は維持しつつ、社会生活のあらゆる場面で旧姓を通称として法的に使える制度を創設するとしています。家族の一体感を損なわず個人の名前使用の自由度を高める現実的解決策として賛同できます。

  • スパイ防止法制の整備

インテリジェンス機能強化の一環として、スパイ防止関連法(外国代理人登録法やロビー活動公開法など)の検討開始と、速やかな法案策定・成立を約束しました。国益を守る法整備として支持できる施策です。

  • 外国人政策の見直し強化

外国人問題に関して、ルールを守れない外国人への厳正対処や、在留外国人の量的管理を含む「人口戦略」を策定することが明記されました。また、日本版CFIUSとなる対日投資審査機関の創設や外国人の土地取得規制強化の法案を準備するとしています。無制限な移民受け入れにブレーキをかけ、日本社会の安定を守る方向性は一定程度評価できます(欲を言えば「外国人比率5%以内」など数値目標も示して欲しかったところです)。

  • エネルギー政策(原発再稼働・核融合炉開発・地熱促進

電力需給逼迫への対応として、原発の安全最優先での再稼働や、次世代革新炉・核融合炉の開発加速、地熱など日本の強みを活かした再生可能エネルギー開発推進が掲げられました。エネルギー自給と最先端技術開発を両立する戦略として評価できます。

  • 大学数の適正化

少子化に伴い大学の数と規模の適正化を図る方針が示されています。18歳人口が減少する中で無秩序に大学が乱立する状況を見直し、教育資源の質向上を図る意図であり、望ましい方向です。

以上のように、連立合意には保守改革路線として一定の前進が見られる項目もあります。参政党としても「社会保険料の減額」「男系男子の皇位継承維持」「旧姓使用の拡大」「スパイ防止法制定」「外国人規制強化」「原発・核融合等エネルギー政策の推進」「大学数適正化」といった点は概ね歓迎できると考えます。

しかし問題は、これら良い部分が所信表明演説で十分に強調・具体化されなかったこと、そして何より肝心の他の重要政策で後退や曖昧さが目立ったことです。以下、特に見過ごせない問題点について順に論じていきます。

消費税減税の不十分さ――「責任ある積極財政」の限界

まず最大の問題点は、消費税減税策が極めて不十分なことです。

維新との連立合意では「飲食料品について2年間に限り消費税をゼロ(非課税)にすることも視野に検討する」と明記されました。

維新の藤田共同代表も物価高騰への緊急対応として「消費税の飲食料品2年間ゼロ税率」の実現を最優先で議論開始すると約束していました。

ところが、高市首相の所信表明演説では消費税減税について一切言及がありません。演説で触れられた物価高対策はガソリン税の暫定税率廃止やエネルギー料金補助といった項目のみで、消費税には終始沈黙が貫かれました。

連立合意で示された減税方針が早くも後景に退いた形であり、たった「2年間・飲食料品のみ消費税ゼロ」ですら明言できなかったことに愕然とします。

これは、合意時点での減税策が早くも腰砕けになったことを意味します。

背景には前述の財政規律派の存在や圧力があるのでしょう。所信表明演説の文言にも「財政の持続可能性に常に配慮しつつ」という但し書きが付いており、「責任ある積極財政」と言いながら従来の財政健全化志向から脱しきれていないことが伺えます。

これでは思い切った減税策は期待できません。 参政党は当初から消費税ゼロ%まで踏み込む積極財政を主張しています。少なくとも生活必需品だけでなく全品目で大胆な減税を行い、国民の可処分所得を増やすことで消費と景気を刺激すべきです。

現在、日本の国民負担率(税と社会保険料の合計負担割合)は約48%に達しているとの試算もあります。

参政党はこれを「国民負担率35%まで引き下げる」ことを目標に掲げています。この観点からすれば、食料品のみ2年間非課税などという策は生ぬるいと言わざるを得ません。

たとえ一時的にせよ消費税ゼロに踏み込む大胆さが必要です。中小企業や家計を直接温め、国民の購買力を高める減税なくして、物価高による生活不安を速やかに和らげ景気回復の実感を届けることはできません。まして所信表明でその約束すら後退したことは、大いに問題だと考えます。

高市首相は演説で「所得を向上させ消費マインドを改善し、税率を上げずとも税収増を目指す好循環を実現する」と述べました。しかし税率は据え置いたまま景気回復を期待するのは楽観的すぎるでしょう。まずは減税という即効性のある手段で国民の懐を温めることが急務です。

減税なくして「責任ある積極財政」ではその看板も有名無実となってしまいます。

政府・与党には大胆な減税策への舵切りを強く求めたいところですが、現状の所信表明を見る限り積極財政は「責任ある」の枠内に押し込められ、思い切りに欠けています。

「政治とカネ」の改革後退――
企業・団体献金問題への及び腰

次に指摘したいのは、企業・団体献金の禁止を巡る姿勢が曖昧なことです。

これは「政治とカネ」の問題として国民の関心も高い論点でした。維新は野党時代から企業・団体献金の全面禁止を主張しており、今回の連立参加の条件としてもそれを掲げていました。しかし連立合意文書では、自民党が「禁止より公開」、維新が「完全廃止」を主張してきた経緯に触れつつ、現時点で最終結論に至っていないと記されています。

両党は第三者委員会で検討を加え、高市総裁の任期中(今後2年以内)に結論を得るという先送り案で合意したのです。

維新の藤田幹事長は「旗を降ろしたわけではなく任期内で必ず実現を目指す」と強調し、あくまで段階的な合意であって妥協ではないと説明しました。

しかし2年もの先延ばしは有耶無耶にされるリスクが高いと言わざるを得ません。案の定、高市首相の所信表明演説では企業・団体献金問題について直接的な言及はありませんでした。

演説では「各党からの政策提案を柔軟に受け入れ政治改革に取り組む」といった抽象的表現に留まり、企業・団体献金禁止への具体策や決意は聞かれなかったのです。

この態度は参政党から見れば極めて不十分で生ぬるい対応です。私たち参政党は企業・団体献金の即時全面禁止を明確に主張しており、どんな理由でも先送りは許されないとの断固たる姿勢を貫いています。

政治資金のクリーンアップは一刻も猶予できない課題であり、与党協議の中で曖昧決着に終わらせるべきではありません。

企業や業界団体からの多額の献金が政策決定を歪めるのではないかという国民の疑念は根強く存在します。

その不信を払拭するには、「禁止より公開」といった及び腰ではなく明確に禁止することこそ必要です。

維新は連立政権入りに際し、この点で主張をトーンダウンさせてしまいました。その結果、「維新は与党にすり寄って主張を曲げた」と一部有権者から批判の声も出ています。

参政党は全ての国民からの信頼醸成が重要であり、「最後までやり抜く」というメッセージを発し続けます。

政治とカネの問題に曖昧な態度を見せた高市政権・維新連立に対し、参政党は真正面からクリーンな政治の実現を迫っていく所存です。

Part②へつづく

ABOUT ME
北野ゆうこ
北野ゆうこ
衆議院議員
1985年9月19日 京都府京都市生まれ 滋賀県守山市在住
携帯電話販売会社や夫が経営するイベント会社で経理の資格と経験を生かし勤務する
コロナ禍をきっかけに政治が国民に寄り添っていないことに疑問を持ち、日本人の生活を守るため立候補を決意。2024年、第50回衆議院議員総選挙で 滋賀第3区から参政党公認として出馬し
比例近畿ブロックで初当選
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